設立
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事業拠点の特徴と進出の形態
・事業拠点の特徴と進出の形態
インドに事業拠点を設立する場合、2013年インド会社法(Companies Act, 2013)及び外国為替管理法(FEMA)に準拠して、通常は現地法人、支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィスのいずれかの事業形態を選択することになります。
現地法人の設立根拠は、インド会社法であり、支店、駐在員事務所及びプロジェクトオフィスは、「2000 年支店その他の事業拠点の設立に関する外国為替管理規則2 条(c)項」及びインド会社法の「インド国内における事務所設立に関する条項(591 条~ 602 条)」に従う必要があります。
事業拠点によっては、活動内容に一定の制限がありますので、インド進出の際はどの形態で進出するかを、その特徴を理解した上で決定する必要があります。
駐在員事務所、支店の設立の際には、承認取引カテゴリーI銀行(Authorized Dealer Category-I Banks)やインド準備銀行(RBI)による事前審査を受けることになりました。本社の財務状況などが審査の対象とされ、複数の期間にわたって損失を計上している場合には、設立許可証が下りないケースもあるので注意が必要です。
■現地法人
・現地法人の特徴
インド会社法において会社は、株式有限責任会社(Company Limited by Shares)、保証有限責任会社(Company Limited by Guarantee)、無限責任会社(Unlimited Company)の3 種類に大別されます(12 条2 項(22)(21)(92))。
株式有限責任会社は、株主がその有する株式の引受価額を限度とする責任を負うのみの会社形態です。インドにおいても最もポピュラーな形態の会社であり、日本の会社法上の「株式会社」に相当します。
保証有限責任会社は、株主の責任が基本定款(MOA:Memorandum of Association)にあらかじめ定めた金額に限定される会社形態です。債権者が株主に直接責任を追及できるのは会社が解散、清算した場合に限られているのが特徴的で、株主が責任を負う金額も基本定款にその上限が定められています。
無限責任会社とは、会社債権者に対して会社とともに無限連帯責任を負う会社形態のことです。日本の会社法上「合名会社」に相当します。
日系企業がインドで会社を設立する場合、そのほとんどが株式有限責任会社を採用しますので、ここでは株式有限責任会社について取上げます。
2013 年会社法によると、株式有限責任会社は、払込資本金額や株主数、定款の規定に応じて、公開会社(Public Company)と非公開会社(Private Company)の2つに分かれています。
2 0 1 3 年会社法1 2 2 条において株主が自然人1 名のみとする「一人会社(One Person Company)」が規定されています。一部の財務諸表提出義務の免除や、定時株主総会の開催義務の免除など、一般の非公開会社と比較して義務が軽減されています。しかしながら、2 0 1 4 年会社規則2 章3 条において、「インド国籍および居住者の自然人のみが一人会社を設立できる」との記載があるため、日本人や日系企業を含む外国投資家は資格要件を満たすことができません。
非公開会社、公開会社のどちらを選択するかは、基本的には発起人の意思に任されますが、銀行や保険業など一定の業種は公開会社として設立しなければなりません。インドでは、商号(社名)を見ると、
その会社が公開会社か非公開会社か一人会社か区別することができます。公開会社には「Limited」、非公開会社には「Private Limited」、一人会社には「OPC」が社名の最後に付与されます。
・公開会社と非公開会社の比較
公開会社、非公開会社の会社法上の特徴をまとめると、以下の通りになります。公開会社のメリットである資金調達機能などは、インドへ進出する日系企業にとって、あまり必要ではなく、むしろコンプライアンス遵守のための間接コストを追加的に会社が負担しなければなりません。したがって、一般的には非公開会社を選択するほうが望ましいと考えられます。
・現地法人の活動範囲とその制限
現地法人は、定款の範囲内であれば活動内容に制約を課されることはありません。そのため、支店や駐在員事務所、プロジェクトオフィスなど他の進出形態と比べて、最も自由な活動を行うことができま
す。ただし、投資する業種や立地により一定の規制があります(第三章「投資規制」参照)。2017 年までは一部規制業種について外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が必要となっていました。しかしながら、同委員会による承認の制度は廃止されました。現在はFIPB に代わり、規制業種を管轄する各省庁からの事前承認が必要となるため注意が必要です。
・現地法人の設立手続き
インドに現地法人を設立するには、自ら直接投資を行う場合や、既存のインド企業から株式を取得する場合(買収)、既に直接投資を行っている日本を含めた外国企業から株式を取得する場合などが考えられます。
既存のインド企業から株式を取得する場合には、その会社が上場会社(Listed Company)か非上場会社(Unlisted Company)かによってその取扱いが異なります。
上場会社の場合、株式を取得する際の価格は市場価格を上回るものでなければなりません。また非上場会社の場合には、資本発行監視局(CCI:Controller of Capital Issues)が公表するガイドラインに従い、インドの勅許会計士(Chartered Accountant)が定めた評価額で株式の取引を行わなければなりません。
以下では、日本の企業が自ら直接投資を行う場合の非公開会社の設立モデルを示します。
インドに現地法人を設立するには、所管官庁の事前承認が必要な場合と不要な場合があります。事前承認が必要な業種については、インド商工省産業政策促進局(DIPP)のウェブサイトに掲載されている
ネガティブリストで確認することができます。以前は外国投資促進委員会(FIPB)により事前承認が行われていましたが、2 0 1 7 年にFIPB が廃止されました。現在は当該規制業種の各所管官庁に申請の
上、事前承認を得ることになっています。所管官庁による承認が得られた場合は、当該承認申請が不要な場合と同様に、会社法に基づいて会社設立・登記申請を行うことになります。そして、会社設立が完了し、資本金の払込が完了した後、30 日以内にRBI に会社設立の事後報告を行うことになります。
・デジタル署名証明書(DSC)の取得
現地法人の設立手続は、インド企業省(MCA:Ministry of Company Affairs)のウェブサイトを通じて行われることになります。そのため、申請書類にサインを行うには、直筆で行うのではなく、電子署名を貼付して手続が行われます。具体的には、オンライン申請中に署名が必要になった場合、画面上の署名欄をクリックして自分の署名を選択すると、電子署名が申請書類に貼付されます。
デジタル署名証明書(DSC:Digital Signature Certificate)の申請は、会社登記局(ROC)に委託された民間企業に対して行い、その民間企業の一つであるTATA Consultancy Services の申請用紙には、申請者の名前、性別、生年月日、現住所、メールアドレスなどを記載する必要があります。また、身分証明と住所証明のためにパスポートや戸籍謄本、運転免許証のコピーや英訳したものを申請書類に添付する必要があります。
これらの添付書類には、公証役場において公証人の公証(Notarization)を受け、その公証人の所属する(地方)法務局長による公証人押印証明及び外務省の認証(アポスティーユ)が必要となります。東京都内及び神奈川県内の公証役場では、これらの手続を公証役場においてワンストップで行うことができます。
なお、日本とインドはハーグ条約(認証不要条約)を締結しているため、インド大使館における認証は本来不要ですが、無用なリスクを避けるため、インド大使館での認証手続を行うことも、一考の価値が
あります。
日本の公証役場に納める手数料は公証人手数料令で定められており、インドに提出する書類が私署証書などの認証に当たる場合、私署証書などの手数料5,5 0 0 円(3 4 条1 項)に外国文の認証として6,000 円が加算され(34 条3 項)1 万1,500 円となります。
・納税番号(PAN)の取得
納税番号(PAN:Permanent Account Number)は、税務署とのやり取りに必要となる番号で、法人所得税の申告書に記載が求められるものです。
PAN のフォームには、Form 49A とForm 49AA があります。インドに居住する者はForm 49A を用いてPAN の申請を行い、居住していない者はForm 49AA を用いて申請します。個人でも法人でもPAN を取得する際の申請フォームは同様です。
・その他税務コードの取得
源泉徴収番号(TAN:Tax Deduction Account Number)は源泉徴収が必要となる取引に必要な番号で、PAN と同様に法人の設立登記申請と同時期に取得する必要があります。そのほか、輸出入を行う
場合は輸出入者管理コード(IEC:Importer-Exporter Code)、物品・サービスの売買を行う場合は物品・サービス税(GST:Goods and Services Tax)コードを取得する必要があります。
法人登記手続として2016 年にSPICe フォームという新フォームが導入され、2018 年からはこのフォームを用いることで、登記申請と同時に商号、PAN、TAN、DIN を取得することが可能になりました。
従来は登記前に商号取得、DIN とDSC の取得を行い、登記後にPAN とTAN を別途取得するという流れでした。各種ライセンスの取得が登記申請時に集約されたため、法人設立の所要時間が大幅に短縮
されました。ただし、SPICe フォームを使用せずに会社を設立する場合には、従来の手順に従ってPAN とTAN を取得する必要があります。
・会社設立後手続きの簡略化
2016年に導入されたSPICeフォーム(INC-32)は、2020年2月にSPICe+(Simplified Proforma for Incorporating a Company Electronically Plus)として大幅に機能強化されました。SPICe+では会社設立登記と同時に、PAN・TAN取得に加え、EPFO(従業員積立基金)・ESIC(従業員国家保険)への登録も一括処理が可能となり、法人設立の所要時間がさらに短縮されました。なお、2023年1月よりSPICe+はV3フォームに移行しています。
従来は会社の登記申請後にPAN及びTANを別途申請・取得する必要がありましたが、 SPICeフォーム導入後は会社の登記申請と同時に、PANとTANを取得することが可能になりました。実務的には、フォーム49A(PAN申請用)とフォーム49B(TAN申請用)に電子署名を付し、アップロードした後に、SPICeフォームの申請、即ち会社の登記申請が可能となりました。ただし、SPICe フォームを使用せずに会社を設立する場合には、従来の手順に従ってPAN とTAN を取得する必要があります。会社設立時の手続きの煩雑さを解消し、今後の益々の海外投資を促進する政府の考えが伺えます。
・取締役識別番号(DIN)の取得
取締役識別番号(DIN:Director Identification Number)とは、会社の取締役を番号によって識別するために、各取締役に割当てられる番号のことです。DIN によって、各会社の取締役の身分を確認することができます。また、一人の取締役が15 社以上の会社(公開会社の場合は10 社まで)の取締役を同時に兼任することを禁止する規定(会社法165 条)を、DIN を通じてチェックすることになっています。
インド会社法に従い、インド企業省に会計年度期末日(3月31日)までに、取締役番号(Director Identification Number、以下「DIN」)の割当を受けている全ての個人は、翌年度9月30日までに身元情報を"Form DIR-3KYC”にて申告することを義務付けられています。
2019年6月28日、インド企業省は、2014年会社法12A(Rule 12A of the Companies Rules, 2014.)に基づくDIR-3 KYCの申告規定に以下の修正を発表しました。
(1)2018年4月1日から2019年3月31日までにDIN-KYCの申請を行った個人は政府系のウェブサイトよりオンライン登録が必要になります。
前回の登録で携帯番号やメールアドレスに変更がある場合は、フォームDIR-3KYCの提出により修正が可能です。
その他、前回の登録で個人情報に修正点がある場合はフォームDIR-6の提出により修正が可能です。
(2)上記(1)に該当しない場合で、2018年4月1日から2019年3月31日までにDINを取得した個人は、通常のDIN-KYCの対応が必要になります。
・商号の申請
2018 年1 月より、DSC およびDIN の取得前でも商号申請ができるようになりました。
希望する社名が、既存の会社の社名に類似している場合には、既存の会社が作成した、商号の使用について異議がない旨のレターである、「No Objection Certificate Letter(NOC レター)」が必要となります。NOC レターは、インド国内国外を問わず、また親会社も含むため、日本の親会社と類似する社名をインド子会社に用いる場合にも、当該NOC レターの提出が必要となります。日本の親会社からNOCレターをインド当局に提出する場合には、公証人役場およびインド大使館の認証が必要となります。希望する商号がすでにインド国内で商標登録されているかどうかは、インド企業省のウェブサイトから事前に確認することができます。
商号申請には、下記のフォームに加えて、一部書類を英訳し公証およびアポスティーユを受ける必要があります。これらの書類を用意して、インド企業省のウェブサイトを通じて、会社登記局に対してオンラインで申請することになります。
・ SPICe フォーム
・ 会社設立決議のための取締役会議事録
・ 会計事務所などに会社設立を委任する旨の委任状(POA:Power of Attorney)
・ 類似商号の使用に異存のない旨のレター(NOC レター)※
※類似商号を使用する場合のみ
類似の商号が登記されておらず、書類に不備がなければ、申請から1 ~ 2 週間程度で希望した社名を承認するか否かについての通知が届きます。
・会社の登記申請
商号が認証された後、会社登記局から設立証明書(Certificate of Incorporation)を取得する必要があります。設立登記申請には、3 種類の申請書(Form1、FormINC22、FormINC7)を提出する必要があります。
「Form1」は、会社の設立手続に際し、インド会社法を遵守して設立手続を行ったことを宣言する書類です。Form1 には、授権資本金額や発行予定株式総数、額面金額などの資本情報と取締役の氏名や生年月日などの情報を記載して提出する必要があります。
Form1 を提出する際に、基本定款(MOA)や附属定款(AOA)を添付する必要があります。そのため、この時期までに、定款の記載内容について会計事務所や弁護士事務所などと内容を確認しておく必要があります。
「FormINC22」は、設立された会社名や登記住所を申請するための書類 です。このフォームで登記住所の記載が必要となりますので、設立を依頼した会計事務所や弁護士事務所の住所を登記住所として登録を行うか、既に契約のある不動産がある場合には、その住所を登記住所とするか決めておく必要があります。
また、FormINC22 には、その内容が正しいことの証明を会社秘書役 等から得る必要があります。
設立登記申請は、商号使用の承認が出てから60 日以内に行わなければなりません。商号使用の承認が下りた会社名の有効期間は20日となるが、商号予約の延長することも可能となっており、最長60日間まで延長できるとされています。
基本定款及び附属定款を会社登記局に提出する際には、各州に応じた「印紙税」を支払う必要があります。印紙税は、州税であるため、税額が州によって異なります。また、授権資本金額に応じ登録免許税を会社登記局に支払う必要があります。この登録免許税は、授権資本金額を増額した場合にも必要となります。
下記の試算表の通り、その手数料も相当な額になりますので、授権資本金額は慎重に決定する必要があると考えられます。
なお、授権資本金額に応じた登録免許税の金額は、インド企業省のサイトから確認することができます。
設立登記後180日以内に会社登記局に対して業務開始の宣言を行わなければなりません(1 1 条3 項)。資本金の払込と業務開始宣言の直後から業務を開始することが可能ですが、非公開会社の場合は、
実務上はさまざまな準備をしておく必要があります。たとえば、不動産を見つけて、賃貸契約の条件も事前に交渉しておくことにより、法人設立後速やかに営業が開始できます。また、設立手続中にインド人従業員の雇用準備を進めておくことも、スムーズな事業開始のために重要です。
・定款の記載事項
2013 年インド会社法には、その末尾にScheduleⅠからⅦの附属文書が設けられています。ScheduleⅠのTable A に株式有限責任会社の附属定款の、Table F に基本定款のモデルがそれぞれ示されています。
・ 商号
・ 登記事務所の属する州名
・ 事業目的
・ 株主は有限責任である旨
・ 資本金及び授権資本金額
・ 発起人の氏名、住所、保有株式数など
2013 年会社法では、会社が定款に記載された目的以外の行為を行った場合には、たとえ全株主の同意があったとしても、絶対的無効になると解されています。そのため、会社の事業目的を作成する場合に
は、将来行う可能性がある事業を包括的に記載しておく必要があります。たとえば、設立当初は輸入販売を行いますが、将来的にはインドで製造販売を行うことが予定されている場合には、製造業を加えま
す。
設立を委任するインドの会計事務所や弁護士事務所が用意する標準的な定款には、会社に応じて作成する主目的以外にもさまざまな目的が数十項目にもわたって記載されており、設立した会社がインドでの
主目的以外の活動を行っても支障が起きないようになっています。附属定款には、次の事項が記載されますが、その詳細については会社によって区々となります。
・ 定義
・ 株式と株主の権利
・ 株主総会
・ 取締役会
・ マネージャーまたは秘書役
・ 社印
・ 配当及び準備金
・ 計算
・ 清算
・ 免責
2013 年会社法では、会社がその適用を一部または全部排除することを明示した独自の定款を採用しない限り、会社法のモデルが会社の附属定款として適用されると規定されています。ただし、インド企業と合弁会社を設立する場合に、合弁契約の条件と定款の記載内容を一致させる必要があります。
株主総会での決議事項の把握も重要です。特に注意が必要な点は、定足数や議決要件が標準の附属定款では「議決権数」ではなく、「株主の挙手数」であることです。これが原因で、出資比率では日本側がインド側を上回っていても、総会に出席した株主がインド側の方が多いと、インド側に有利な決議が行われてしまうことがあります。このリスクを回避するには、定款に株主総会決議は挙手ではなく議決権数による旨を規定するなどの対策が必要です。
このように、会社法のモデルをそのまま利用すると、議決権などの面で、日系企業が不利益を被るおそれがあります。合弁企業を設立する際には、相手企業が提出してきた定款をそのまま採用するのではなく、適切な法律事務所や会計事務所と相談して作成することが重要となってきます。
・第一回取締役会の開催
現地法人設立後、3 0 日以内に第一回取締役会を開催し、監査人を選任する必要があります(会社法1 3 9 条6 項)。その他に、株式の発行およびインドでの銀行口座開設、取締役の選任、設立費用の承認
などの決議が行われます。新設会社に設立費用を負担させる場合、発起人に対する日本からの海外送金時に、この第一回取締役会議事録が必要となります。
・株式の電子化(Demat化)義務【2023年法改正・重要】
2023年10月27日付のインド企業省(MCA)通達により、小規模企業(small company)を除くすべての非公開会社(Private Limited Company)に対して株式等有価証券の電子化(Demat化:デマテリアライゼーション)が義務付けられました。これにより、対象会社は有価証券を電子化された形態でのみ発行・保有・譲渡することが求められます。期限は2025年6月30日とされており、インド国内の証券保管機関(Depository)でDemat口座を開設するには、日本の株主・取締役のKYC書類準備と認証手続が必要となり、株主側で4〜6カ月程度の準備期間を要します。インド進出中の日系企業は早急な対応が必要です。
・銀行口座の開設
現地法人設立後、各株主から資本金を振り込むため、インドの現地法人名義の口座を開設する必要があります。日系企業が進出する際、邦銀の口座を開設するケースが一般的です。各銀行によって、口座開設に必要書類が異なるため、設立手続中に開設予定の銀行から必要資料などの確認をしておくと設立登記完了後、スムーズに口座の開設を行えるでしょう。
・資本金の送金及びRBI への資本金の着金に関する報告
銀行口座開設後、各株主から資本金の送金を行います。外国法人が株主となった場合、資本金着金後一定期間内にインド準備銀行(RBI)に報告する必要があります。この報告は、承認取引カテゴリーⅠ銀行を通して行われ、資本金着金後30 日以内に顧客確認(KYC:Know Your Customer)の提出、資本金の着金後180 日以内に株主に対して株券を発行し、株券発行後3 0 日以内にForm「FC-GPR」の提出と大きく分けて2 段階に分かれています。
・KYC の提出
資本金の払込が完了すると、当該銀行から外国対内金送金証明書(FIRC:Foreign Inward Remittance Certificate)が発行されます。資本金の払込を終えた企業は、資本金着金後3 0 日以内に銀行を
通してRBI に顧客確認(KYC)を提出する必要があります。KYC はFIRC Intimation と呼ばれることもあります。RBI のウェブサイトからKYC フォームをダウンロードし、添付書類としてレポート報告書とFIRC のコピーを用意します。レポート報告書はKYC 報告の旨が記載されたレターで、レターヘッドおよび代表者のサインが必要です。KYC 提出後、1 ~ 2 カ月の間に、RBI から固有の識別番号(UIN:Universal Identification Number)が発行されます。
・RBI への株式の割当に関する報告
Circular No.38 (December 3, 2003)の通達によると、UINの発行後、承認取引カテゴリーI 銀行を通してインド準備銀行に「FC-GPR」を提出しなければなりません。「FC-GPR」は、インド準備銀行のウェブサイトからダウンロードすることができ、以下の書類を添付する必要があります。
・ レターレッド
・ 株価評価(勅許会計士のサイン必要)
・ コンプライアンス証明(会社秘書役のサイン必要)
・ FIRC のコピー
FC-GPR は、株式の評価額が正当であることをRBI に報告する目的で作成されます。企業は5 カ年の事業計画を作成し、DCF 法によって割引現在価値を算定します。この方法により算定された評価額が、実際の額面金額よりも高くなければならないため注意が必要です。
なお、これらの報告は外国為替管理法(FEMA)により義務付けられており、違反した場合、罰金が科される可能性があります。
・輸出入コード(IEC)の取得
インドの会社が輸出入を行うためには、輸出入コード(IEC)を取得しなければなりません。PAN カードのコピーや銀行証明書などの提出が求められるため、両者の手続が終了した後に行う必要があります。
・現地法人設立スケジュール
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■支店
・支店の活動範囲
支店は、本店(外国法人)の一部として取扱われることとなり、内国法人として取扱われる現地法人とはさまざまな点で異なります。
上記の通り、支店に認められている活動内容は、限定列挙となっています。
支店が、製造業や加工業など上記以外の業務を行う場合には、RBIの特別許可を得る必要があり、許可が得られたとしてもRBI に対して定期的な業務報告を行うことが義務付けられています。このことからも分かるように、支店は現地法人と比べ活動範囲に制約があり、主として販売活動やテクニカルサービスセンターといった位置付けとなっています。
・借入及び送金
支店は、活動資金を本社からの送金または自らの事業活動から生じる利益によって賄わなければならず、自ら借入を行うことはできません(2000 年支店その他の事業拠点の設立に関する外国為替管理規則6 条)。
また、支店で生じた利益は、認められた業務内で得たことを証明すればインド準備銀行の承認なしに本店に送金することが可能です(2000 年支店その他の事業拠点の設立に関する外国為替管理規則7 条)。
・支店の代表者
2013 年会社法(7 条(1)(e))によると、インド支店がインドで営業を続けるためには、インドに居住性を有する代表者の名前と住所を登録する必要があります。また、支店の構成員のうち少なくとも
1 名はインドに居住していなければなりません。この居住している1名は必ずしも支店の代表者である必要はありませんが、代表者が現地にいないと活動に支障をきたす恐れがあるため、一般的には代表者が
インド国内に居住することになります。
・支店と日本本社の財務諸表
日本に親会社がある場合、日本側で支店財務諸表を合算して本支店の財務諸表を作成することができる点が現地法人との大きな違いです。そのため、進出当初など投資額が多額になり赤字が計上される場合には、支店の活動経費を本店の所得計算上、損金に算入することができるため、日本における法人税を軽減できるというタックス・メリットを享受することができます。
しかし、インド支店の業務が軌道に乗り、売上が継続的に計上されるようになってくると、そのメリットは減少します。更にインド支店が利益を計上するようになると、インドにおける法人所得税は現地法人より支店の方が高く設定されているため、メリットを享受できなくなります。
・会計監査及び移転価格税制
インドの場合、すべての会社に対して法定監査を受ける義務を課していますが、支店も例外ではなく、毎年インドの勅許会計士による監査を受けなければなりません。
また、支店と日本本社との取引は、インドの移転価格税制の適用を受けるため、注意が必要です。
・支店の設立手続き
・外国会社の数値要件
支店および駐在員事務所の設立に関する手続は、2 0 0 9 年にRBIから発表された通達に従います。この通達には、外国会社の利益や純資産金額についての数値基準が示されています。
利益基準
通達の別紙では、外国会社の利益実績が明確に示されています。まず、支店を設立する条件として、直近の5 会計年度において利益があったこと、駐在員事務所を設立するには、直近の3 会計年度にお
いて利益があったことが明示されました。
純資産基準
通達の別紙には、外国会社の利益基準とともに純資産基準も示されています。すなわち、支店を設立するには「1 0 万US ドル相当額以上」、駐在員事務所を設立するには「5 万US ドル相当額以上」の純
資産が外国会社に求められることが明確になりました。純資産とは、「公認会計士や会計士などの名称で登録されているものによって認証された、直近の貸借対照表上の払込資本および剰余金から無形固定資産を控除したもの」、と定義されています。支店や駐在員事務所を設立しようとしている外国会社が、利益基準や純資産基準を満たしていない場合もあります。そのような場合は、外国会社の「親会社」が利益基準や純資産基準を満たしていれば、親会社から「コンフォートレター」を発行してもらうことを条件に、基準を満たしているとみなされます。
・承認取引カテゴリーI 銀行の審査、インド準備銀行への申請
2 0 1 0 年以降は、Form FNC を、それが数値基準を満たしていることを証明するために必要な添付書類とともに、まず承認取引カテゴリーI 銀行に提出し審査を受ける方法へと変更になりました。これは、
RBI がその審査権限の一部を外部の商業銀行に委譲して、業務の効率化を図ったものと考えられます。承認取引カテゴリーI 銀行は、外国法人から提出されたForm FNC およびその添付書類の精査を行い、コメントを付した上で、RBIに申請手続を回すことになります。承認取引カテゴリーI 銀行は、RBI のサイトにリストが掲載されており、インド国内の大手商業銀行や邦銀の支店などもこれに分類されています。
プロジェクトオフィスを設立する場合は、原則としてRBI において審査を受けて、設立許可証を受取る必要があります。ただし、外国会社(本社)がインド国内の会社と「プロジェクトの契約を締結済」であり、かつ以下の条件のいずれかを満たしている場合、例外的にRBI からの事前承認は不要となります。
・ 外国からの送金により、プロジェクトに必要な資金が賄われている
・ 国際的な資金供給機関により、プロジェクトに必要な資金が賄われている
・ プロジェクトに必要な認可を関係当局から取得している
・ インド側の契約相手が、プロジェクトへの支払に関してインドの公共機関または銀行から期限付きの貸与を受けている
「Form FNC」やその添付書類に不備等の問題がなければ、インド準備銀行は設立許可書を外国法人に対して発行することになります。
・会社登記局への登録
RBI から設立認可を受けた時点で設立したものとみなされますが、実際に支店や駐在員事務所などとして活動できるのは、会社登記局で設立登記を行い設立証明書を取得した後となります。
会社登記局へは、Form FC1 と呼ばれる書類を提出することになります。Form FC1 は、RBI に設立が認められた支店や駐在員事務所などの本社(外国会社)の状況を報告するという位置づけとなってお
り、以下の書類を添付する必要があります。
・ 本社の定款および登記簿謄本
・ 本社の定款を英訳したもの
・ 本社の直近の財務諸表
・ 本社の取締役一覧
・ インドに居住する者(会計事務所など)に支店などの設立を委任した場合の委任状
・ RBI による設立許可証の全コピー
会社登記局への登録申請後、約1 カ月程度で登録が完了し、拠点開設証明書が発行されます。この証明書の取得後に、支店や駐在員事務所などは活動を開始することができます。
・DSC の取得
支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィス設立の場合にも、各種手続にはデジタル署名(DSC)が必要となります。DSC の取得手続は、現地法人設立と同じです。
■駐在員事務所
・駐在員事務所の活動範囲
駐在員事務所は、「主たる営業所または本社とインド国内の顧客との連絡拠点」と定義されており、認められている活動は以下の通りです(2000 年支店その他の事業拠点の設立に関する外国為替管理規則2条(e)項)、2000 年5 月FEMA22 スケジュール2、インド準備銀行(RBI)通達、2009年12月A. P.( DIR Series) Circular No. 23)。
・駐在員事務所への税務調査と税務申告
駐在員事務所を設立してから相当期間年数がたっている場合(駐在員事務所の認可の期間は3 年であり、3 年ごとの更新が必要)や事務員を多く雇用しているなど、営業活動を行っている外形がある場合に
は、駐在員事務所に対しても税務調査が入る可能性があります。近年、駐在員事務所に対する税務監査が厳しくなっており、実質的に営業活動を行っているとみなされた場合は、証憑書類やEmail などさまざまな文書が調査され、場合によっては「みなし課税」が課されるケースがあるため、十分な注意が必要です。駐在員事務所では営業活動を行うことができないため、通常、所得はマイナスとなります。そのため、法人所得税申告書を提出する必要はないと誤解されがちですが、所得税法には駐在員事務所も法人所得税申告書を提出しなければならないことが明記されています。所得がない場合であっても、その旨を記載した申告書を毎期提出する必要があります。また、駐在員事務所であっても、インド勅許会計士による法定監査を受ける義務があります。
・駐在委事務所設立の手続き
・外国会社の数値要件
支店および駐在員事務所の設立に関する手続は、2 0 0 9 年にRBIから発表された通達に従います。この通達には、外国会社の利益や純資産金額についての数値基準が示されています。
利益基準
通達の別紙では、外国会社の利益実績が明確に示されています。まず、支店を設立する条件として、直近の5 会計年度において利益があったこと、駐在員事務所を設立するには、直近の3 会計年度にお
いて利益があったことが明示されました。
純資産基準
通達の別紙には、外国会社の利益基準とともに純資産基準も示されています。すなわち、支店を設立するには「1 0 万US ドル相当額以上」、駐在員事務所を設立するには「5 万US ドル相当額以上」の純
資産が外国会社に求められることが明確になりました。純資産とは、「公認会計士や会計士などの名称で登録されているものによって認証された、直近の貸借対照表上の払込資本および剰余金から無形固定資産を控除したもの」、と定義されています。支店や駐在員事務所を設立しようとしている外国会社が、利益基準や純資産基準を満たしていない場合もあります。そのような場合は、外国会社の「親会社」が利益基準や純資産基準を満たしていれば、親会社から「コンフォートレター」を発行してもらうことを条件に、基準を満たしているとみなされます。
・承認取引カテゴリーI 銀行の審査、インド準備銀行への申請
2 0 1 0 年以降は、Form FNC を、それが数値基準を満たしていることを証明するために必要な添付書類とともに、まず承認取引カテゴリーI 銀行に提出し審査を受ける方法へと変更になりました。これは、
RBI がその審査権限の一部を外部の商業銀行に委譲して、業務の効率化を図ったものと考えられます。承認取引カテゴリーI 銀行は、外国法人から提出されたForm FNC およびその添付書類の精査を行い、コメントを付した上で、RBIに申請手続を回すことになります。承認取引カテゴリーI 銀行は、RBI のサイトにリストが掲載されており、インド国内の大手商業銀行や邦銀の支店などもこれに分類されています。
プロジェクトオフィスを設立する場合は、原則としてRBI において審査を受けて、設立許可証を受取る必要があります。ただし、外国会社(本社)がインド国内の会社と「プロジェクトの契約を締結済」であり、かつ以下の条件のいずれかを満たしている場合、例外的にRBI からの事前承認は不要となります。
・ 外国からの送金により、プロジェクトに必要な資金が賄われている
・ 国際的な資金供給機関により、プロジェクトに必要な資金が賄われている
・ プロジェクトに必要な認可を関係当局から取得している
・ インド側の契約相手が、プロジェクトへの支払に関してインドの公共機関または銀行から期限付きの貸与を受けている
「Form FNC」やその添付書類に不備等の問題がなければ、インド準備銀行は設立許可書を外国法人に対して発行することになります。
・会社登記局への登録
RBI から設立認可を受けた時点で設立したものとみなされますが、実際に支店や駐在員事務所などとして活動できるのは、会社登記局で設立登記を行い設立証明書を取得した後となります。
会社登記局へは、Form FC1 と呼ばれる書類を提出することになります。Form FC1 は、RBI に設立が認められた支店や駐在員事務所などの本社(外国会社)の状況を報告するという位置づけとなってお
り、以下の書類を添付する必要があります。
・ 本社の定款および登記簿謄本
・ 本社の定款を英訳したもの
・ 本社の直近の財務諸表
・ 本社の取締役一覧
・ インドに居住する者(会計事務所など)に支店などの設立を委任した場合の委任状
・ RBI による設立許可証の全コピー
会社登記局への登録申請後、約1 カ月程度で登録が完了し、拠点開設証明書が発行されます。この証明書の取得後に、支店や駐在員事務所などは活動を開始することができます。
・DSC の取得
支店、駐在員事務所、プロジェクトオフィス設立の場合にも、各種手続にはデジタル署名(DSC)が必要となります。DSC の取得手続は、現地法人設立と同じです。
・駐在員事務所スケジュール
■プロジェクトオフィス
・プロジェクトオフィスの特徴
プロジェクトオフィスは、建設やインフラ整備プロジェクトなど、限定された契約の遂行のためにのみ設置される形態であり、建設会社などが単発的に案件を獲得した場合などに利用されます。支店との違いは、支店はインドにおいて一定の事業を継続的に行うことを予定して設立されるのに対し、プロジェクトオフィスは特定のプロジェクトを遂行するために、一定期間のみ開設されるという点にあります。
プロジェクト遂行のために必要な資金は、本店やその他外国からの送金で賄わなければならず、インドの銀行などから借入を行うことはできません。
・プロジェクトオフィス開設の条件
プロジェクトオフィスを開設するには、RBI の許可が必要です。RBI の許可を得るためには、本店がすでにインド国内でプロジェクトに関する契約を締結済みであり、かつ、以下の4 つの要件のいずれかを満たす必要があります。
・ プロジェクトに必要な資金が、インド国外からの送金で賄われること
・ プロジェクトに必要な資金が、国際金融機関(世界銀行やアジア開発銀行等)から賄われていること
・ 当該プロジェクトが、インドの関係当局から認可を得ていること
・ プロジェクトの支払について、インドの公的金融機関や銀行との間で返済期限付きの融資を契約していること
上記の要件を満たす場合には、原則としてRBI の個別承認は不要となり、比較的簡単にプロジェクトオフィスを開設することができますが、要件を満たさない場合やインド以外の国から当該プロジェクトを請け負っている場合やその外国会社が一定の国の企業である場合には、RBI の個別承認が必要となります。なお、RBI の個別承認が不要な場合でも、開設の届出は必要となります。
RBI へ開設の届出は、駐在員事務所や支店の場合と同様に、AD カテゴリー銀行を経由して行い、認可を受けた後に会社登記局(ROC:Registrar of Companies)に対してプロジェクトオフィスの登録を行う流れも同じとなります。
■有限責任事業組合
・インドのLLPについて
2 0 0 8 年4 月の予算案において、有限責任パートナーシップ法(Limited Liability Partnership Act and Rules)により、有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)形態での組織構成が可能となりました。その後、2 0 1 7 年統合海外直接投資政策通達(Consolidated FDI Policy Circular of 2017)により、自動認可ルートで1 0 0% 外資参入が認められる分野については、LLP での進出ができるようになりました。
従来LLP への外国直接投資(FDI)に関して明確な基準が認められていなかったため、LLP によるFDI はほとんどありませんでした。LLP に対する制限は年々緩和されており、元々有利と考えられていた小規模のサービス業に限らず、近年は多くの業種がLLP 形態で進出し、他の設立形態からの転換が起きています。インド政府は2 0 1 1 年5 月2 0 日、LLP へのFDI を認めると発
表しました。LLP 制度を使うと、対外商業借入(ECB:External Commercial Borrowing)ができないといった制限はありますが、配当分配額算定時の法定準備金に制限がなく、また最低代替税(MAT)も課されないため、大きな設備投資を必要としない事業形態では、現地法人設立に比べてより効率的な運営ができるという利点があります。なお、配当分配税(DDT)は2020年4月1日に廃止されており、現在は現地法人・LLPを問わず配当受領者側での課税方式(源泉徴収10%)に統一されています。
なお、FDI政策に関する主な変更点は以下の通りです。
FDI 政策に関する主な変更点は以下のとおりです。
・ LLP へのFDI は、自動承認ルートにより現時点で100% の投資が認められているすべてのセクターに対して、他の関連する制限がないことを条件に1 0 0% まで認められる。ノンバンク金融事業会社や建設開発プロジェクトは、最低投資額等の追加要件を満たす必要があるため、LLP での投資は認められない。
・ LLP へのFDI は、農業・農園、メディア、不動産業による参画は認められない。
・ FDI により設立されたLLP に、ダウンストリーム投資(間接投資)を行うことはできない。ただし、外資1 0 0% によって設立されたインド法人がLLP に対してダウンストリーム投資を行うことは、上記進出可能事業においては可能である。
・ LLP に対するFDI は、すべての設立において各業種の所管官庁による事前承認が必要となる。
・ LLP に対するFDI は、現金出資のみが認められる。現物出資は認められない。
・ LLP は、インド国外から商業借入(ECB)を行うことは認められない。
・ LLP のパートナーとして認められているのは、インド居住者(1 8 3 日以上インド国内に居住している人(LLP 法7 条(1)))のみとされる。
・ 外国機関投資家および外国ベンチャーキャピタル投資家は、インドLLP への投資が禁止される。
・LLPに対する課税
インドのLLP において特筆すべき点は、日本と異なりパススルー課税(構成員課税)ではなく、LLP 自体に対して課税される点です。
パススルー課税とは、LLP において利益が生じた場合でも、LLP自体には課税されず、出資者に対して課税されるという制度です。この制度によって、法人税を課税された後に個人所得税を課税されるという二重課税を回避することができます。
パススルー課税は、日本を含め世界各国のLLP で採用されていますが、インドでは認められていないので注意が必要です。
LLP への実効税率は31.20% で、以下の式で算出されます。
また、前述の通りインド現地法人は、配当を行う際に「配当分配税」が課税されますが、LLP の場合は、配当分配税が非課税となります。また、現地法人に対して課される最低代替税もLLP には適用されません。
今後、税制面や責任の範囲において、LLP を設立するメリットを享受することができるビジネスとして次のような形態が考えられます。
・ 会計士や会社秘書役等の専門家
・ ベンチャーキャピタルや投資組合のように知識や専門性の必要なリスクの大きな投資
・ 小規模な企業、手工業分野の企業
・LLPの設立手続
・パートナー選定
インドでLLP を設立するには、新しく新設されたLLP 法に沿った形で行う必要があります。インドでLLP を設立するには、パートナーの最低人数は2 名で、人数の上限規定はありません(LLP 法6 条)。
ただし、パートナーのうち1 名はインド居住者である必要があります(LLP 法7 条(1))。6 カ月以上の期間にわたって、2 名以下で活動する場合には、すべての責任は個人に委ねられます。原則として、いかなる自然人、法人もパートナーとなることができますが、以下の場合には欠格事由にあたりパートナーになることはできません(LLP法5 条)。
・ 裁判所により、心神耗弱であると判断された者
・ 破産した者
・ 破産の適用申請がなされ、当該申請が継続中である者
LLP の設立には、パートナー以外に、コンプライアンス上の責任を負う指定パートナーが少なくとも2 名必要です(LLP 法8 条)。指定パートナーは、自然人でなくてはならず、少なくとも1 名はインド
に居住している必要があります(LLP 法7 条(1))。会社において取締役がDIN を取得するのと同様に、指定パートナーは指定パートナー識別番号(DPIN:Designated Partnerʼs Identification Number)
を取得します。パートナー間またはパートナーとLLP 間における権利義務については、LLP 契約(LLP Agreement)によって規定されます。LLP 契約に規定のない問題が発生した場合は、LLP 法のSchedule I に従って対応することになります(LLP 法23 条)。
・DSC、DPIN の取得
LLP の設立手続のためには、会社設立時と同様に、DSC とDPINが必要となります。DSC の取得手続は、他の会社形態設立時におけるDSC の取得手続と同様です。
一方、DPIN を取得するには、インド企業省ウェブサイト内のLLP のページ(http://www.llp.gov.in/home_llp.htm)において、Form-7 に必要事項を記入することにより、オンラインで申請を行います。
・商号申請
DSC を取得した後は、LLP 法18 条(5)に基づき、Form1 に必要事項及び希望する商号候補を3 ~ 6 つ記入しオンライン申請を行います。候補となる商号を決める際、既に類似の商号で登録されていないかを事前に確認しておくと良いでしょう。商号の申請及びDPINの申請は同時に行えます。
・LLP 契約書の作成
インド現地法人設立には、企業の事業目的や名称などが記されている定款の作成が必要となりますが、LLP の場合、有限責任事業組合契約書の作成が求められます。一般的に、以下などの項目がLLP 契約書により決定されます。
・ 名称
・ パートナー名
・ パートナーの責任及び権利
・ 事業内容
・ 組合員の出資目的
・ 存続期間
・ 契約の効力発生日
・ 紛争解決
LLP 契約書を締結しない場合には、以下の項目(LLP 法Schedule 1)に基づき、パートナーの責任および権利を明示しなければなりません。
・ すべての利益、負債、資本はパートナー間で同等に分けられる
・ すべての組員は事業のマネジメントを行うものとする
・ 新たなパートナーの追加は、既存のパートナーの承認を要する
・登記申請
商号取得の後は、登記の申請を行います。登記の申請も、インド企業省ウェブサイト内のLLP のページで行います。Form 2 に必要事項を記入して手数料を支払い、Form 1 6 を記入することによってLLP の設立となります。その後30 日以内にForm3 とForm 4 を記入し、すべての手続が完了します。
参考文献
[参考資料・ウェブサイト]
・ 株式会社ジャパンオーバーシーズコーポレーションインドビザ支援センター
http://www.indianvisaatjapan.co.jp/index_jp.html
・ DIN Process Document
http://mca.gov.in/MCA21/dca/din/processdoc.pdf
・ Department of Industrial Policy & Promotion
http://dipp.gov.in/policies-rules-and-acts/policies/foreign-direct-investmentpolicy
・ KPMG、あずさ監査法人インド事業室編『インドの投資・会計・税務ガイドブ