会社法
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インドにおける会社法コンプライアンス
■2013年インド会社法概要
2014年4月、2013年会社法(The Companies Act, 2013)が施行されました。
旧法の1956年会社法(The Companies Act, 1956)は、新会社法施行までの57年間、古い体系を維持したまま改正を重ねて来たため、重複規定が存在し、異なる解釈の余地がある点で混乱が生じていました。加えて、変化の激しい実務環境にあわせて近代化・グローバル化を図り、今後の技術的・法律的な発展も見据えた上で、新会社法が施行されることとなりました。
特徴として、一人会社、独立取締役、CSR(Corporate Social Responsibility)の義務化等の新規概念が導入され、旧法では定義が曖昧だった休眠会社(Dormant Company)と赤字会社(Sick Company)の該当基準や監督機関、手続が明文化されたことが挙げられます。また、監督機関や、株主総会、取締役会の運営、取締役、監査役、会社秘書役等のインド会社法上の基本的機関に要求されるコンプライアンス上の変化にも着目すべきでしょう。
なお、2013年会社法(以下、会社法)の施行以来、インド企業省(Ministry of Corporate Affairs)は、規定を改正する通達を毎年発表し、改正を重ねています。本書では執筆時点における最新情報の掲載を心がけていますが、会社運営上の意思決定に際して、インド企業省による最新通達発表の有無を常に確認する姿勢が求められます。
なお、インド企業省の最新通達の発表状況は同省のウェブサイトより確認できます。
【2025年〜2026年の主要改正動向】2025年から2026年にかけて、インド会社法に関する複数の重要な改正が行われています。主な動向として、2025年12月1日施行のSmall Company定義の改正(払込資本金上限を4クローレから10クローレへ、売上高上限を40クローレから100クローレへ引き上げ)、2025年12月31日公布・2026年3月31日施行の取締役KYC(DIR-3 KYC)の申告頻度の変更(毎年から3年に1回へ)、Companies (Amendment) Bill 2025(CSR適用基準の引き下げ等を提案、2025年12月5日Rajya Sabha提出・未成立)、Corporate Laws (Amendment) Bill 2026(会社法およびLLP法の広範な改正を提案、2026年3月23日Lok Sabha提出・合同議会委員会付託中)などが挙げられます。いずれも今後の成立・施行状況を継続的に確認する必要があります。
■インドにおける株式
[インドにおける株式の種類とその概要]
インドにおける株式の種類は、資本株式(Equity share capital)と優先株式(Preference share capital)に大分類され、資本株式はさらに、議決権付普通株式(with voting rights)と配当や議決権その他の事項について異なる権利を有する普通株式(with differential rights)に小分類されます。日本における、種類株式の制度と似ています。
公開会社は、資本株式と優先株式のみが発行できると規定されていますが、非公開会社は、株式の種類や議決権等の適用を除外しているため、定款に定めれば上記以外の株式を発行することが可能です。
ただし、実務上は資本株式と優先株式以外の株式が非公開会社より発行されている事例はほとんど見られておりません。
・資本株式
資本株式は、「議決権付普通株式」と「異なる権利を有する普通株式」に小分類されます。「議決権付普通株式」は、日本の何ら制約のない普通株式とほぼ同じであり、日系インド子会社のほとんどがこれを発行しています。
「異なる権利を有する普通株式」は、配当と議決権についてのみ「議決権付普通株式」と異なる権利を定めることができる株式であり、その他の規定については「議決権付普通株式」と同様に取り扱わなければなりません。つまり、自益権と共益権について異なる権利を与えたものです。
「異なる権利を有する普通株式」を発行するためには、附属定款(AOA)が異なる権利を有する普通株式の発行を認めており、株主総会の普通決議の承認を得ていることを前提に、以下の要件を満たす必要があるので注意が必要です。
- 株式発行の直近3年間配当可能利益を有すること
- 株式発行の直近3年間財務諸表および年次報告書の提出を怠っていないこと
- 預託金、利息、社債の償還や配当金の支払に遅延がないこと
また、この「異なる権利を有する普通株式」は資本金総額の25%を超えて発行することはできません。
・優先株式
優先株式とは、利益配当(一定額または一定率により算定された配当額)や残余財産分配(会社の清算または資本の払戻)について、優先的権利を有する株式と定義されています。つまり、自益権について有利な株式です。優先株式は定款で定めがあり、株主総会で特別決議を経て、かつ優先株式の買戻や配当の支払に不利益が生じていない場合に発行することができます。
なお、2015年6月5日に発行された通達により、定款で別途定めがある場合には、非公開会社について43条が適用されない旨が定められており、定款の定めによって43条に定めのない種類株式を発行することが認められております。
優先株式の特徴は、発行から20年以内に償還できない優先株式、または普通株式に転換できない優先株式を発行できないことです。すなわち、優先株式は発行から20年以内に必ず償還または、普通株式に転換できなければならないということです。
償還または転換の期限が定められているという点で、優先株式は社債に近い性格を有していると言えます。日本で言うところの、株式の社債化(債権化)です。意図的に償還期限を設けて、自由度の高い資金調達が可能となります。
[株式の電子化]
インドでは、会社法の改正により、株式の電子化(Dematerialization)が段階的に義務付けられてきました。従来、非上場会社の株式は物理的な株券(Share Certificate)により管理されていましたが、2023年10月27日、企業省(MCA)はRule 9Bを導入し、Small Company(小規模会社)を除く全非公開会社について、2025年6月30日までに株式の電子化を完了することを義務付けました。
株式の電子化とは、物理的な株券を発行する代わりに、株式の保有状況を電子的に記録・管理する仕組みです。具体的には、NSDL(National Securities Depository Limited)またはCDSL(Central Depository Services Limited)という預託機関(Depository)に株式を預託し、デポジトリ参加者(Depository Participant、以下「DP」)を通じて株式の保有・移転を電子的に管理します。
株式を電子化するためには、まず会社がNSDLまたはCDSLと預託契約(Depository Agreement)を締結する必要があります。次に、株主は各自でDPに口座(Demat Account)を開設します。DPは、銀行や証券会社などがその役割を担っています。株主がDemat口座を開設した後、会社は物理的な株券を回収し、対応する株式をDemat口座に記録します。この一連の手続により、株式の電子化が完了します。
株式を電子化することにより、いくつかのメリットがあります。第一に、株券の紛失や盗難のリスクがなくなります。第二に、株式譲渡の手続が簡素化されます。物理的な株券の場合、譲渡には株券の現物の引渡や裏書が必要でしたが、電子化された株式の場合、DPを通じた電子的な手続により譲渡が完了します。第三に、株主名簿の管理が容易になります。他方、株式の電子化には一定のコストがかかります。会社は預託機関との契約に関連する費用を負担する必要があり、株主もDemat口座の開設・維持に費用を負担します。また、電子化の手続には一定の時間を要します。
電子化義務の対象となる会社は以下の通りです。
- Small Companyを除く全非公開会社
- 上場公開会社
- 非上場公開会社
なお、2025年12月1日以降、以下の両方の条件を満たす非公開会社がSmall Companyに該当します。
- 払込資本金:10億ルピー以下
- 売上高:100億ルピー以下
ただし、以下の会社は、上記の財務基準を満たしていても、Small Companyとして扱われず、電子化義務の対象となります。
- 持株会社(Holding Company)
- 子会社(Subsidiary Company)
- インド会社の子会社
- 外国会社の子会社(日本法人等の海外親会社を持つインド子会社を含む)
- Section 8会社(非営利法人)
- 特別法で規制される会社
日系企業にとって特に重要な点は、日本法人が親会社となっているインド子会社は、たとえ上記の財務基準を満たしていても、「子会社(Subsidiary Company)」に該当するため、Small Companyの免除は適用されず、電子化義務の対象となることです。したがって、日系企業のインド子会社の大半は、規模に関わらず、2025年6月30日までに株式の電子化対応を完了する必要がありました。同期限はすでに経過しており、現時点(2026年)では電子化が完了していない場合、新株発行や株式譲渡等が制限されるほか、会社法Section 450に基づく罰則(1万ルピーの罰金および継続違反に対する追加罰金)が適用されるリスクがあります。未対応の会社は速やかに対応することが不可欠です。
日系企業の実務では、日本の親会社がインド子会社の株式を保有している場合、日本の親会社もDemat口座を開設する必要があります。非居住者である日本企業がDemat口座を開設する際には、PAN(Permanent Account Number)の取得、KYC(Know Your Customer)要件の充足、親会社の設立証明書や定款等の各種書類の提出、書類のアポスティーユ認証、インド国内での手続代理人の選任など、追加的な手続が必要となります。また、親会社は過去2年分の財務諸表、株主構成、取締役リスト等の提出も求められます。これらの実務的な対応については、事前に預託機関やDPに確認しておくことが重要です。
株式の電子化が義務付けられているにもかかわらず、これを怠った場合、会社法Section 450に基づき、会社および違反責任者に対して1万ルピーの罰金が科され、違反が継続する場合には1日あたり1,000ルピー(上限20万ルピー)の追加罰金が科される可能性があります。また、電子化を完了していない会社は、新株発行、自己株式取得、ボーナス株式の発行等を行うことができなくなり、株主も物理的な株券の譲渡や新株の引受ができなくなります。したがって、要件に該当する会社は、速やかに電子化の手続を進める必要があります。
■株式発行、自己株式取得について
[授権資本金額の増額]
授権資本金額(Authorized Capital)とは、会社が株式発行により調達できる資本の上限額を定款で定めたものです。日本では発行可能株式総数であり、取締役会が適宜に発行可能な上限の規程も存在しますが、インドには日本の公開会社のような1/4規定はありませんので、授権資本金額をいくら増額してもよいことになります。
ただし、授権資本金額を高くしすぎると、定款の登録料が高額になってしまい、コスト負担が大きくなるので注意が必要です。インドに現地法人を設立する場合、将来の資金計画を考慮して、授権資本金額および資本金を決定することになります。
現在の授権資本金額以上の資金が必要になった場合には、基本定款(MOA)を変更して、授権資本金額を増額することになります。この場合は、通常、株主総会の特別決議を経る必要があります。
公開会社のうち、証券取引所に上場している上場会社(Listed Company)は、取締役会を開催した後、授権資本金額を増額する旨の議事録を証券取引所に提出する必要があります。また、株主総会を開催した後にも、授権資本金額を増額する旨の決議が行われた株主総会議事録のコピーを証券取引所に提出する必要があります。さらに、定款を変更した後に、変更部分のコピーを証券取引所に提出する必要があります。
[株主割当増資]
株主割当増資(Rights Issue)とは、既存株主に対し、その持株比率に応じて新株を引き受ける権利を付与する増資手法です。既存株主の持株比率を維持しながら資本増強を図ることができるため、インドにおいても最も一般的な増資形態の一つとなっています。日本企業がインド子会社の資本を増強する際、この株主割当増資を選択すれば、他の株主との持株比率を変えることなく、追加出資を行うことができます。
株主割当増資を実施する場合、会社は株主に対し、新株引受の申込期間として最低15日、最長30日を与えなければなりません。
基本的な手続としては、まず取締役会において増資の方針を決議し、増資額、発行価格、株主への割当比率などの基本条件を決定します。会社は各株主に対し、持株比率に応じた新株引受権を通知します。株主からの申込を受け付け、所定の期間内に株式の払込を完了させます。日本の親会社からの払込は、インドルピー建てで行う必要があります。払込完了後、会社はRegistrar of Companies(ROC)に対し、株式の割当日から30日以内に増資の届出を行います。日本企業が株主である会社が株主割当増資を行う場合、外国直接投資(FDI)規制の適用を受けます。ただし、株主割当増資により日本側の持分比率が増加する場合でも、業種別規制の範囲内であれば、原則として新たな承認は不要です。
[第三者割当増資]
第三者割当増資(Preferential Allotment)とは、既存株主以外の特定の第三者に対して新株を割り当てる増資手法です。新たな投資家やパートナーを迎え入れる際に用いられるほか、日印合弁会社において日本側の持株比率を引き上げる場合にも利用されます。第三者割当増資を実施する場合、既存株主の持株比率希釈化による不利益を防ぐことを目的に、株主総会にて出席株主の4分の3以上の賛成を要する特別決議による承認が必要となります。
基本的な手続としては、まず取締役会において増資の方針を決議し、割当先、増資額、発行価格などの基本条件を決定します。次に、株主総会の特別決議により増資を承認します。決議に際しては、割当先の氏名・名称、割当株式数、発行価格、払込期限などを明示する必要があります。株主総会承認後、会社は割当先と株式引受契約を締結し、所定の期間内に払込を完了させます。払込完了後、会社はRegistrar of Companies(ROC)に対し、株式の割当日から30日以内に増資の届出を行います。
[株式譲渡]
株式はインド会社法上の規程、および附属定款の定めに基づき、譲渡することが可能とされています。しかし、非公開会社は株式の譲渡制限を定めるため、譲渡の際にはすべての株主の同意等、附属定款に定められた要件を満たす必要があります。
附属定款に定められる株式譲渡規定は、株式譲渡には、取締役、株主の同意が必要である規定、または、株式譲渡を行う際には、先に既存株主に売却を打診することが定められる規定(先買権)などを設けるのが一般的です。公開会社には、そのような制限がないため、自由に株式を譲渡することが可能です。
[自己株式取得]
インド会社法では、会社が自己の株式を買い取ることをバイ・バック(Buy-back)と呼んでいます。日本での認識と同様に、インドでも自己株式の取得には、会社の財産的基礎を害する、株主平等の原則に反する、会社支配の公正を害する、株式取引の公正を害する、という4つの弊害があるとされています。そのため、インド会社法では厳格な財源規制および手続要件が定められていますが、これらのルールに従う限り、会社は発行済株式を取得することが認められています。
自己株式取得の目的としては、株価が過小評価されている場合の株価引上げ、余剰資金の株主還元、一株当たり利益(EPS)の向上、敵対的買収に対する防衛などが挙げられます。日系企業の実務では、インド子会社から日本の親会社への資金還元手段として、配当に代えて自己株式取得が検討される場合があります。
インド会社法Section 68(1)は、自己株式取得の原資を以下の3つに限定しています。
第一に、配当可能利益(Free Reserves)です。これは、会社が過去の利益として蓄積した剰余金を指します。ただし、資産や負債の公正価値評価による評価差額は含まれません。
第二に、株式払込剰余金(Securities Premium Account)です。これは、株式を額面価額を超える価格で発行した際の超過額を指します。
第三に、新株発行の払込金(Proceeds of the issue)です。ただし、同種の株式の発行により調達した資金を、同種の株式の取得に充てることは禁じられています。たとえば、普通株式の発行資金で普通株式を買い取ることはできません。
また、自己株式取得を実施するには、以下の要件を満たす必要があります。
まず、定款(Articles of Association)において自己株式取得が認められている必要があります。定款に規定がない場合は、まず定款を改定します。
次に、以下の数量的制限を遵守しなければなりません。
- 取得総額は、払込資本金と配当可能利益の合計額の25%以下
- 普通株式の取得は、当該事業年度において払込済普通株式資本金の25%以下
- 取得完了後の負債資本比率が2:1以下(負債が払込資本金と配当可能利益の合計額の2倍以下、言い換えれば、払込資本金と配当可能利益の合計額が負債の50%以上)。ただし、政府系金融会社は6:1
- 全額払込済株式のみが対象
さらに、過去3年間において以下のいずれの債務不履行もないことが条件となります。
- 預託金(deposits)またはその利息の返済
- 社債(debentures)の償還
- 優先株式(preference shares)の償還
- 配当の支払
- 金融機関・銀行への借入金またはその利息の返済
ただし、これらの債務不履行が解消され、かつ解消後3年が経過した場合は、自己株式取得が可能となります。
加えて、会社が会社法Section 92(年次報告書)、Section 123(配当の宣言)、Section 127(配当の不分配に対する罰則)、Section 129(財務諸表)の規定を遵守していることが必要です。
取得額が払込済普通株式資本金と配当可能利益の合計額の10%以下の場合は取締役会決議、10%を超える場合は株主総会の特別決議による承認が必要です。会社はROC(および上場会社の場合はSEBI)に対し、申込書(Form SH-8)および支払能力宣誓書(Form SH-9)を提出し、株主に申込書を送付します。取得方法には、既存株主からの比例的取得、公開市場を通じた取得、従業員ストックオプションに基づく取得があります。取得した株式は取得完了日から7日以内に消却しなければなりません。インド会社法では金庫株制度は認められていません。完了後30日以内に、Form SH-11により完了届出を行います。
自己株式取得が配当可能利益または株式払込剰余金を原資として行われた場合、取得株式の額面金額と同額を資本償却積立金(Capital Redemption Reserve Account)に振り替える必要があります。取得完了後6カ月間は新株発行ができません(転換社債、新株予約権等の既存債務履行を除く)。自己株式取得は決議の日から12カ月以内に完了し、前回の取得完了日から1年以内は次回の取得を行うことができません。子会社または投資会社を通じた取得は禁止されています。違反した場合、会社および違反責任者に対して、それぞれ10万ルピー以上30万ルピー以下の罰金が科される可能性があります。
・日系企業の実務上の留意点
2024年の税制改正により、自己株式取得の場合、株主側で配当課税(Deemed Dividend)として課税されることとなりました。また、普通株式の取得は年間25%までに制限されているため、日本の親会社が保有するインド子会社株式の全部を取得するには、最短でも4年から5年を要します。インド事業からの撤退を検討する際には、株式譲渡による方法の方が迅速に実施できる場合があります。
[減資]
減資(Reduction of Share Capital)とは、会社の資本金を減少させる手続です。インドにおいて減資が行われる主な場面としては、累積損失を整理して財務諸表上の欠損を解消する場合や、過剰な資本を株主に払い戻す場合があります。日系企業の実務では、特に前者のケース、すなわち累積損失の整理を目的とした減資が多く見られます。
減資を実施するためには、定款(Articles of Association)において減資が認められている必要があります。仮に定款に規定がない場合は、まず定款を改定する必要があります。
減資の手続は、裁判所の承認を要する点で、他の資本取引と大きく異なります。まず、株主総会の特別決議により減資を承認します。決議に際しては、減資の方法、減資額、減資後の資本構成などを明示する必要があります。株主総会承認後、会社は管轄のNational Company Law Tribunal(NCLT)に対し、減資の承認申請を行います。
NCLTは、減資が会社の債権者の利益を害するものでないかを審査します。具体的には、会社の債権者に対し、減資に異議がある場合は申し立てを行う機会が与えられます。債権者からの異議申立がない場合、またはNCLTが減資を相当と認めた場合、NCLTは減資を承認する命令を発します。NCLT承認後、会社はRegistrar of Companies(ROC)に対し、減資の届出を行います。
累積損失を整理するための減資の場合、株主に対する払戻は行われず、帳簿上の処理のみが行われます。具体的には、資本金勘定を減額し、それと同額の累積損失を消去します。この方法により、貸借対照表上の繰越損失を解消し、将来の配当可能利益の算定基盤を整えることができます。
一方、過剰な資本を株主に払い戻す減資の場合、会社は株主に対し、減資額に相当する金銭を支払います。この場合、会社の資金が流出するため、会社の財務状況が十分に健全であることが前提となります。NCLTも、債権者保護の観点から、この点を慎重に審査します。
減資の手続には、通常6ヶ月から1年程度の期間を要します。これは、NCLTによる審査や債権者への通知期間が必要となるためです。また、NCLTへの申請には、弁護士による代理が必要となるほか、公告費用なども発生します。
日系企業の実務では、インド子会社が長期にわたり損失を計上した結果、多額の繰越欠損金を抱えているケースがあります。このような場合、減資により累積損失を整理することで、財務諸表の見栄えを改善し、また将来黒字化した際に配当を行いやすくすることができます。ただし、減資手続には時間とコストがかかるため、実施の要否は慎重に判断する必要があります。
インドにおけるコーポレートガバナンス体系
■会社機関の体系
インドの会社機関は、株主および株主総会、取締役および取締役会、監査役および監査委員会及び会社秘書役から構成されます。日本との大きな違いは、会社秘書役の存在です。また、それぞれの機関の設置義務や要件も異なっています。それぞれの機関は、公開会社か非公開会社か、払込資本金額などの一定の条件に応じてその設置が強制されることになります。
日本の会社法と機関の名称が同一であっても、その役割が大きく異なる機関もあります。また会社秘書役は、日本の会社法には存在しない機関です。したがって、その役割や設置強制の有無を十分に知っておく必要があります。これから進出する日系企業は、公開会社として設立するか非公開会社として設立するか、資本金額をいくらに設定するかとともに、会社の機関制度についても把握する必要があり、また、すでに進出している会社にとっても増資をしたことによって、設置が強制される機関があるので、自らの会社の機関を再度確認する必要があります。
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■株主および株主総会
[株主について]
インド会社法上、株主とは、間接有限責任のもとで企業の社員(Member)たる地位を示す株式を所有し、自益権と共益権をもつ者と定義されます。インドでは、組合(Partnership)は法人格を有しないので株主となることはできませんが、個人も法人も株を保有することができます。自益権とは、企業から経済的利益を受ける権利です。共益権とは、企業の管理運営に参加する権利です。
会社法で、非公開会社の株主数は2人以上、公開会社の最低株主は7人以上、1人会社の最低株主は1人以上と定められています。
2013年会社法では、株主が1名以上から設立できる「1人会社」が認められましたが、設立可能な者が「インド国籍を保有し、且つインドに居住する自然人」に限定されていることから、日本企業を含む外国企業がその完全子会社として1人会社を設立活用することは不可能です。
しばしば、日本企業がインドに100%子会社を設立したとアナウンスしていますが、これは、親会社である日本企業が99%、日本企業の役員や関係会社が1%(または1株)を保有しているなど、名目的に株式数の要件を満たしているにすぎません。
つまり、実質的な100%子会社を設立する場合には、1株を除きすべてを親会社となる会社が保有し、残り1株を関係会社が保有するといった方法を取る必要があります。
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[名目的株主]
名目的株主(Nominal Shareholder)とは、インド独特の制度で、インド会社法上の定義では、「Declaration by persons not holding beneficial interest in any share」(株式保有の受益権を持たないと宣言した株主)となっています。下記の図のとおり、会社に対して、自益権(会社から利益を受ける権利)を第三者に与えることを宣言した株主のことを意味します。名目的株主が第三者に与えることができる権利は、自益権に限られ、株主総会で議決権を行使するなどの共益権を与えることはできません。
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株主は、インド会社法上、会社に対してさまざまな権利を有しますが、その権利は大きく自益権と共益権に分類されます。
自益権として、株主は保有する株式数に応じて、会社から利益配当を受ける権利があります。日本の会社法では、剰余金の配当は1事業年度中、何回でも可能ですが、インドの会社法では、利益配当は原則として1事業年度1回であり、取締役会決議により中間配当を行うことが可能です。
共益権として、株主は①株主総会での議決権行使、および一定数以上の株式を保有する株主のみが行使できる権利、②少数株主権を有しています。
①の株主総会での議決権行使について、非公開会社では幅広く定款自治が認められており、インド会社法の事項(株主総会の招集、定足数、議決権の行使方法など)を附属定款で別段の規定を定めることができます。しかし、公開会社では株主数が多くその影響力も大きいため、強行規定が定められ、「定款で別段の定めができる」と明文で規定されている場合を除き、附属定款で別の定めをしても無効となります。②の少数株主権については後述します。
[共同保有]
インドでは、複数の者で株式を共同保有(Joint Holder)することが認められています。共同で保有する場合、非公開会社では共同保有する複数の者が1名の株主として扱われ、公開会社では複数の株主として扱われる、という違いがあります。
[株主総会]
株主総会とは、株主によって構成される必要的常置機関です。インドの会社法上、株主総会は法定株主総会、定時株主総会(Annual General Meeting)及び臨時株主総会(Extraordinary General Meeting)の3種類があります。
最初の定時株主総会は、最初の会計年度の末日から9か月以内に開催する必要があります。またその他の定時株主総会は、会計年度の末日から6か月以内に開催する必要があります。
また、この期間内に最初の定時総会を適法に開催した場合には、会社は設立された年及び翌年は定時総会を開催する必要はありません。その後、2回目以降の定時株主総会は、特別な理由がない場合、原則として年一回、前回の定時株主総会から15カ月以内に開催され、特別な理由がある場合は、ROC(会社登記局)まで届出をすれば、3カ月までこの期間を延長することができます。
定時株主総会においては、監査済み財務諸表(Audited Financial Statements)、取締役会報告書(Director's Report)、及び会計監査人の監査報告書(Auditor's Report)を総会日の21日前までに全株主に送付されなければならないと規定され、一般的には、決算報告(Annual Return)、配当宣言、取締役の選解任、会計監査人の選任及び報酬の決定等の決議が行われます。臨時株主総会は、必要に応じて開催され、その目的が決議されることになります。
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・開催場所
日本では株主総会の開催場所について何ら規制はありませんが、インドでは定時総会は、原則として会社の登記住所または登記住所のある市町村内のいずれかの場所で行わなければなりません。一方、臨時株主総会については開催場所の規定がないため、招集通知に定めれば、いずれの場所で開催することも可能と解されています。
株主がインド国内にいるか、インド国外にいるかにかかわらず、定時株主総会は、会社の登記住所などで行わなければならないということに注意する必要があります。しかし、2017年改正会社法が2018年1月3日に発効され、非上場会社の定時総会については、インド全国のどこでも開催が可能とされております。
・招集権者と招集時期
日本では、原則として取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)が株主総会の招集を決定し、取締役(取締役会設置会社では代表取締役)が招集します。インドの場合は、取締役会の設置は強制であり、取締役会の決議により招集が決定され、取締役が招集します。株主総会の招集通知は、開催する日の21日前までの期間に送付する必要があります。
非公開会社では、定款でその期間よりも短い日数を定めることができます。招集通知方法については、旧会社法では書面による通知が要求されていましたが、新会社法では、新会社法施行規則等で別途定める場合においては、電子的方法を利用することが認められました。定時総会は、議決権を持つ「すべての株主」の同意を得た場合には、その期間を短縮することができます。また、臨時総会も「95%以上の株主」の同意を得た場合には、期間を短縮することができます。
・株主総会の議長
株主総会の議長は、定款もしくは総会に出席した株主の「挙手人数」による多数決で選任されます。日本では、定款に定めがあればそれに従い、なければ株主総会において選任されると解されています。インドにおいても、定款で別段の定めがない限り、議長の選任は挙手人数による多数決が原則とされています。日本の会社法と異なり、インドの議長にはキャスティングボートが与えられているのが特徴的です。したがって、採決で可否同数の場合には議長が最終決定権を有することになります。以上のように、インドの議長には日本のそれよりも強い権限がありますので、日系の進出企業でインド資本との合弁会社を設立する場合などは、「議長が誰であるのか」にも注意が必要となり、合弁契約などで議長は日本側から選任するという規定を設け、附属定款にその旨の記載を行うなどの対策を講じる必要があります。
・決議事項の種類について
インド会社法上、普通決議と特別決議の2つの決議事項が規定されております。以下にて、会社法における決議事項内容についてまとめます。
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・定足数
公開会社における株主総会決議成立のための定足数は、株主数により異なります。株主数が1,000名以下の場合は「5人以上」、1,000名超5,000名以下の場合は「15人以上」、5,000名超の場合は「30人以上」が定足数となります。非公開会社における定足数は、「2人」以上となります。1人会社の場合、株主総会の開催義務はありますが、議事録の作成義務が免除されています。
ここで注意しなければならないのが、決議は出席した株主の「議決権数」ではなく、「株主の人数」で行われることです。日本の場合は資本多数決の考え方をとっており、株式所有割合により意思決定権を持ち、さらに、種類株式による議決権制限株式や累積投票制度があります。しかし、インドでは議決権をどれだけ多く持ったとしても、原則として株式の所有者(人数)が多い方の意見が通ります。
インド企業との合弁で会社を設立した場合、出資比率が日本の会社が過半数であっても、総会に出席した株主がインド企業側の方が多い場合、インド企業側に有利な決議が行われてしまうことがあります。
すでに合弁でインドに進出している企業やこれからインドに進出する企業は、定款で定足数がどのように規定されているか精査する必要があり、合弁先の企業のみに合弁契約書を作成させてしまうと、日本企業の方が出資比率が多い場合であっても株主数のバランスによっては思わぬ決議が行われてしまうリスクがあります。このようなリスクを回避するには、定款に株主総会決議は挙手ではなく投票による旨を規定する、一定以上の株主を確保する、などの対策を講じる必要があります。
・決議要件
普通決議は出席株主の過半数の賛成、特別決議は出席株主の3/4以上の賛成が要件となります。決議要件は定款に定めることにより、普通決議、特別決議ともに厳しくすることができます。合弁を行う場合には、決議要件を調整することによって、決議に一定の縛りをおくこともできます。また、日本の会社法の場合、すべて議決権数に応じて決議が行われますが、インドの会社法では、原則として、人数ベースによる挙手(Showing Hands)が決議要件となります。しかし、議決権ベースによる投票制(Poll)も認められており、ジョイント・ベンチャー(JV:Joint Venture)でマジョリティーを有する場合などは、この投票制を採用するのが望ましいと言えます。
①挙手制(Showing Hands)
挙手による決議を会社が採用すると、保有する株式数は考慮には入らず、取締役会同様、1人1票とカウントされることになります。100%子会社などの場合(会社法上最低株主数は2名であるため、実質的に100%である場合)は決議に対しての立場の相違などは起こりにくいため、特に問題にはなりませんが、インド資本を組み込んでいるJVなどの場合は、各株主保有する株式数が決議に正確に反映されないため、注意が必要です。
②投票制(Poll)
挙手による決議が適当でないと以下の者に判断された場合、株主は挙手による決議の前後にかかわらず、投票制による決議を総会に要求することができます。
・総議決権の10%以上の議決権を保有する株主 ・50万ルピー以上に相当する払込資本を有する株主
インド資本との合弁会社を設立する場合、ないしは独資で設立した後にインド資本の参画を期待する場合などは、設立当初から当該会社の附属定款(AOA)に、決議方法は投票制のみで行う旨を記述するなどの対策を、あらかじめ講じておくのが望ましいと考えられます。
以下にて、インドと日本における定足数と決議要件の違いをまとめます。
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・決議方法
株主総会決議は、前述のとおり、通常は株主本人が出席して挙手または投票することになりますが、インドの会社法では、委任状によって代理人を出席させて、決議を行わせることができます。
日系企業においては、個人(自然人)株主ではなく、法人株主である場合がほとんどです。この場合には、取締役会の決議によって、法人を代表して出席する者を選任することができます。委任状による代理人と法人代理人の相違点は、前者は株主総会で発言することはできませんが、後者は発言することができることです。
また、委任状を持つ個人株主の代理人は、投票制でしか、議決権を行使できません。
他の方法として、日本では株主に議決権行使の機会を保障する観点から、代理行使や書面投票制度、電子投票制度を一定の場合に認めています。インドでも2011年5月20日の通知書(General Circular No. 27/2011)で、従来は認められていなかったテレビ会議の利用が認められることとなり、2011年以降に行われる株主総会では施設を任意で用意できるようになりました。
さらに、一定の要件のもとでは、上場公開会社および非上場会社ともに「郵便投票」が認められ、あるいは義務付けられています。
以上のように、インドと日本の会社法は、多くの共通点を持つ一方、同じ表現を用いていても、まったく異なる内容である場合があります。
株主総会という会社の基本的で重要な決定を行う場面においては、正確な知識を持って対応していかないと、思わぬ損害を被る危険性があります。
[株主総会と登記局への年次申告について]
株主総会が行われてから30日以内に株主総会議事録を作成し、議長がこれにサインをして会社登記局に提出しなければなりません。定時総会においては、決算報告の承認も行われるので、これについても株主総会が行われた日から30日以内に会社登記局に提出しなければなりません。
日本の会社法では、定時総会の開催後遅滞なく貸借対照表(大会社では、貸借対照表および損益計算書)を公告しなければならないと定められているのと同様に、インドの会社法においても、非公開会社は貸借対照表を、公開会社は貸借対照表および損益計算書を会社登記局に提出しなければなりません。会社債権者を保護することが目的で、株主以外も閲覧できるようになっています。
貸借対照表が提出された定時総会において、貸借対照表が承認されなかった場合、承認されず定時総会が延期になった場合、あるいは定時総会が開催されなかった場合には、会社登記局へ提出が要求される貸借対照表のコピーに当該事実およびその理由を明らかにした書面を添付しなければなりません。
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[少数株主権]
日本では資本多数決のもと取締役や監査役が選出され、多数派株主により支配されることから、会社運営で不正が起こり、個々の株主の利益が害される場合があります。これを防ぐため、会社法は個別の株主が会社運営を監督し、是正することを認めており、この権利は少数派の株主保護を目的としていると言えます。しかし、これらの権利は強力であり、濫用の危険があります。このことから、一定の所有要件と期間要件が定められています。
インドの会社法においても、株式会社は資本団体であることから、資本多数決の原則が正当化されていますが、場合によっては多数派株主の専横の危険性もあります。そこで、一定以上の株式を保有している場合には、少数派株主を保護するために、会社に対して影響力を行使することができます。
インドの会社法では、10%以上の株式を保有している場合などに、会社に対して強い影響力を与えることができます。10%以上の株式保有により臨時株主総会の招集、投票(poll)の要求、会社業務に関する調査要求が可能です。
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[株主代表訴訟]
株主代表訴訟は、ワンマン経営のブレーキ役を果たしているという評価がある一方で、権利濫用の株主代表訴訟が企業経営を萎縮させているので、そうした提訴を制限すべきという評価もあり、コーポレートガバナンスの議論では必ず取扱われるテーマの一つであると言えます。
インドでは、サティアムの粉飾決算等の問題によって、コーポレートガバナンスに対する議論は熱を帯びており、特に日本側がマジョリティーを取る合弁会社を設立するようなインド進出では、株主の立場としてどのような権利が与えられているかという観点からも、経営者の立場としてどのようなリスクを有することになるかという観点からも、理解の必要性は高いものと考えられます。
会社法上では、一定の要件を満たせば、株主は取締役に対しての代表訴訟権が認められています。たとえば、取締役が会社法上、または定款上定義される権限を超える行為を行った場合、違法行為を行った場合、または少数株主に対して抑圧的な決議を行った場合など、株主はその取締役に対して代表訴訟を提訴することができます。このような株主代表訴訟は判例法によるものであり、会社法で定められているものではありません。
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■取締役及び取締役会
インドの取締役には全員に代表権があり、日本における代表取締役という概念はありません。インドの会社法上、取締役の規定は公開会社、非公開会社の違いと、払込資本金額によって大きく異なっています。
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[取締役の人数]
日本では、取締役の人数は取締役会設置会社であれば3人以上でなければならず、取締役会非設置会社であれば1人以上であることが求められていますが、インドの場合、取締役の人数は、公開会社では3人以上、非公開会社では2人以上とされています。公開会社、非公開会社のいずれであっても、15名を超える取締役を選任する場合や、附属定款で定めた人数を超える取締役を選任する場合は、株主総会の特別決議を経る必要があります。
したがって、公開会社では3人以上15人以下の人数、非公開会社では2人以上15人以下の人数を定款に定めることになります。また、取締役は同時に20社を超える会社の取締役の兼任が禁止されています。さらには、取締役として選任する会社が公開会社である場合は、10社を超える会社の取締役の兼任が禁止されています。
ただし、公開会社の子会社または持株会社のいずれでもない非公開会社、無限責任会社、営利性のない社団や配当が禁止されている社団、取締役に欠員が生じた場合の予備取締役としてのみ就任させる会社は「20社」の中に含まないとしています。
[取締役の選任・解任と兼任規定]
取締役の選任・解任は、日本と同じく公開会社、非公開会社を問わず、原則として株主総会の普通決議により行います。公開会社の場合、取締役に立候補する者は、株主総会の開催される14日以上前に会社に対して取締役に立候補する旨の署名入りの通知をするか、または会社の社員によって当該者を取締役に推薦する旨の署名入り通知をしなければなりません。取締役に選任された者は、取締役として勤務する旨の「就任同意書」に署名をした上で会社登記局に提出しなければなりません。
公開上場会社は、取締役の1/3以上を独立取締役として選任する義務があります。一方、非公開会社には、上記の規制は課されません。取締役を変更した場合には、変更があった日から30日以内に会社登記局に対してForm DIR-2を提出しなければなりません。報告を怠った場合は、6カ月以内の懲役または5万ルピーの罰金、継続的に報告を怠った場合はさらに1日につき500ルピーの罰金を科される可能性があります。
上場会社 ・資本金が10億ルピー以上の公開会社 ・売上高が30億ルピー以上の公開会社
[取締役の国籍と居住地]
インドの会社法上、取締役の国籍について規定はありません。したがって、日本人であってもインド法人の取締役に就任することはできます。2013年会社法施行後、マネージング・ディレクター、ホールタイム・ディレクターおよびマネージャーの選任要件として、直近12カ月間インドに居住していることが条件として課せられていました。しかしながら、2015年6月に非公開会社に関する規制緩和の告示がなされ、非公開会社には同要件が不適用となりました。ただし、銀行などの規制業種のマネージング・ディレクターはインド国籍を持つ者でなければならないとされています。
また、非公開会社であっても、取締役のうち最低1名は居住取締役でなければならないとされています。
[取締役の任期]
日本の場合の取締役の任期は、原則として2年以内です。これは取締役としての適否を株主に確認するためと解されています。非公開会社の場合は10年まで伸ばすことが可能となります。株主の変動が少なく、緊密な関係にあることが想定されるためです。一方、インドの会社法では、公開会社の取締役の任期は、定款に別段の定めがある場合を除き、その定員の2/3以上を「交代により退任する取締役」とし、それ以外の取締役を「定款で任期を定める取締役」、と定時総会で定める必要があります。非公開会社の場合は、公開会社のような任期の定めがありませんので、原則として任意の期間を定めることができます。一般的には、10年以内の任意の期間を定めている会社が多いようです。
たとえば、あるインドの公開会社の取締役の定員を8人とした場合、そのうち6人以上を「交代により退任する取締役」と定め、残りを「定款で任期を定める取締役」とします。
次にあるインドの公開会社の取締役の定員が8名(A氏~H氏)であった場合を考えます。取締役全体の2/3以上である6名(A氏~F氏)を「交代により退任する取締役」と定め、残り2名(G氏、H氏)を「定款で任期を定める取締役」とします。「交代により退任する取締役」と定められた取締役は、その在任期間が最も長い取締役から3分の1ずつ定時株主総会で退任するものとし、同じ日に就任した取締役については抽選(by lot)で退任する者を決定することになっています。
すなわち、A氏から順に任期が長いと仮定すると、1年目にA氏とB氏が退任し、2年目にC氏とD氏、3年目にE氏とF氏がそれぞれ定時株主総会で退任することになります。新しく「交代により退任する取締役」に任命されても3年後には退任することになるので、通常任期は3年となります。
また、「定款で任期を定める取締役」は、一般的には会社の創業者であるマネージング・ディレクターですが、公開会社のマネージング・ディレクターの任期上限である5年までの任意の期間を定款に定めることができます。
[取締役の報酬]
日本の場合は取締役の報酬は、お手盛り防止の観点から原則として、定款で定めるか、または株主総会の普通決議で定められます。インドの公開会社の場合、取締役に対する報酬の上限額が会社法で定められており、会社の年間純利益の11%を超えてはなりません。しかし、インド中央政府の事前の承認があれば、それを超えて報酬を支払うことができます。
ただし、公開会社が赤字の場合や十分な純利益を確保できていない場合は、取締役に対して十分な報酬を支払うことができなくなります。そのため、インドの会社法はスケジュールVのパートⅡにおいて、別途、報酬について定めています。
また、この場合に、マネージング・ディレクター、常勤取締役またはマネージャーが1名の場合には、原則年間純利益の5%を超えてはならず、2名以上の場合は10%を超えてはなりません。それ以外の取締役については、マネージング・ディレクターや常勤取締役やマネージャーがいる場合には1%を超えてはならず、いない場合は3%を超えてはなりません。
このように、公開会社では取締役に対する過大な報酬を抑制して、会社財産の流出を防ぐとともに、一定の条件のもとに赤字の場合でも、取締役に対する報酬の支払を可能としています。
一方、非公開会社の場合には、公開会社のように報酬の上限は定められていません。したがって、利益がない場合に報酬を支払うことも、支払わないこともできます。
[取締役の種類]
インドの会社法上、通常の取締役(Director)のほかに、株主総会の普通決議により、マネージング・ディレクター(Managing Director)、常勤取締役(Whole-time Director)、に加えて取締役ではない役職としてマネージャー(Manager)を選任することができます。
・マネージング・ディレクター
インドの会社法では、日本の会社法と異なり、個々の取締役に「対外的な」会社の代表権および業務執行権限が与えられています。中でも、マネージング・ディレクターには、取締役会から包括的な授権が与えられていることから、「対外的のみならず対内的」にも会社代表権限と業務執行権限が与えられることが明確にされています。日本の代表取締役に似た概念です。
・常勤取締役
常勤取締役も取締役会から包括的な授権が与えられており、対外的のみならず対内的にも会社代表権限と業務執行権限があり、会社組織内ではマネージング・ディレクターに次ぐ権限を有すると言えます。
・マネージャー
マネージャーは、取締役ではありませんが、取締役会から包括的な授権が与えられたことにより、「対外的のみならず対内的」にも会社代表権限と業務執行権限を有するようになった者と理解されます。インドにおけるマネージング・ディレクターは、日本の代表取締役に相当する役職であると言えます。その任期は、公開会社では1回につき5年を超えることはできませんが、非公開会社では任期の上限は定められていません。
・女性取締役(Woman Director)
上場会社および公開会社のうち、払込資本10億インドルピー以上または売上高30億インドルピー以上の会社は少なくとも1名の女性取締役を置かなければなりません。
・居住取締役(Resident Director)
2013年インド会社法Section 149(3)では、公開会社、非公開会社を問わず、全ての会社は取締役のうち最低一名を、直前の事業年度(4月1日〜3月31日)において合計182日以上インド国内に滞在していた者から選任しなければならないと定められています。 新規設立会社については、居住日数要件が設立日から比例的に算出されます。例えば、2025年10月1日に設立した会社の場合、2026年3月31日までにインドに91日以上滞在すれば居住要件を満たします(182日×6カ月÷12カ月=91日)。
現在、日系企業の実務においては、(1)日本人駐在員を居住取締役として選任する、(2)インド人従業員または経営陣を取締役として選任する、(3)合弁パートナー側から居住取締役を選任する、(4)専門家(弁護士、会計士等)を名目的居住取締役(Nominee Director)として選任する、といった選択肢があります。ただし、名目的居住取締役の利用については、当該取締役が会社法上の責任を負うことになるため、信頼できる専門家を選定することが重要です。
■取締役会
インドの会社法では、公開会社であっても非公開会社であっても、必ず取締役会(Board of directors)を持つことになります。すなわち、会社の取締役で構成される機関を取締役会と定義されており、日本の会社法のように、取締役会非設置会社という概念はそもそも存在しないことになります。
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[定足数]
インドの会社法上、取締役会の定足数は、取締役の総数の1/3(端数が生じた場合には四捨五入)または、2人のいずれか多い方の人数となります。
ただし、取締役会の議題に関して利害関係を有している取締役の人数が総数の2/3以上となる場合は、その残りの取締役、すなわち、利害関係を有しておらず、かつ取締役会に出席した2人未満ではない取締役が、当該取締役会開催のための定足数となります。
定足数に満たさないために取締役会を開催することができない場合、附属定款に別段の定めがある場合を除き、その取締役会は、次週の同じ曜日まで自動的に延期され、当初開催予定であった同じ時刻と場所で開催されることになります。ただし、延期後の次週が祝日の場合、祝日ではない日まで延期されます。
[取締役会の開催と招集]
インドの会社法上、公開会社であっても非公開会社であってもすべての会社の取締役会は、1年に少なくとも4回(3カ月に1回)開催されなければなりません。さらには、各取締役会開催日の間隔を120日以下としなければなりません。日本の取締役会は各取締役が招集権を持ち、開催の一週間前(定款で短くすることが可能)までに各取締役と監査役(監査役会設置会社の場合)招集通知を行いますが、インドでは各取締役への招集通知は、インド国内に在住しているか、国外に在住しているかによって、方法が異なります。インド国内に在住している取締役は、招集通知の書面を渡す必要があり、その省略は認められておりません。一方、インド国外に在住している取締役には、インドにおける通常の住居に宛てて招集通知を行う必要があります。
インドの取締役会は、株主総会と異なり、会社の所在地において開催する必要はなく、インドの他の場所や日本で開催することも認められています。また、従来はビデオ会議システムによる出席は認められていませんでしたが、株主総会と同じく電子的方法による同会出席が認められました。
しかし、株主総会とは異なり、1年に1回以上は直接に取締役会に出席しなければいけない、という内容になっています。
[取締役会の権限]
インド会社法上、取締役会は、法令および定款で株主総会の権限と定義される決議事項以外、すべての事項についての権限を有しているとされています。
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上記以外にも、設立時の銀行口座開設、設立時の会計監査人の選任、社印(Seal)の使用、総会の招集、授権資本金額内での新株の発行、欠員時の空席取締役(Vacancy)の選任等、判例法上でさまざまな権利が付与されると解されています。
2013年会社法においては、一定の事項に関する取締役決議については、株主総会の決議同様に会社登記局への報告が要請されていますが、非公開会社については、取締役会の決議によって取締役会が業務執行できる事項について会社登記局への届出の必要がない旨の緩和措置が導入されております。
[取締役会の議長]
2013年会社法では、取締役会の議長は、附属定款の定めに従い選任できるという規定になっていますが、設置は任意であり、必ず選任しなければならないというものではありません。
取締役会における議長は株主総会のそれと同じように、附属定款にキャスティングボートを有する旨を規定することができます。通常、取締役会の議長は一定の任期を設定した上で、マネージング・ディレクターが選任されます。議長は取締役会議事録の署名者となり、株主総会の議長同様、特定人を中傷する記載等が当該議事録に記載されていると判断した場合、その議事録に不適格な事項を記載しないことができます。
[取締役会を欠席する場合の注意点]
インド会社法上、取締役会の承認を得ないで一定回数以上の取締役会を欠席した場合、そのこと自体が取締役の資格喪失事由となります。この点は、日本より大変厳しくなっていますので、注意が必要です。特に、インド企業との合弁の場合で、日本側が選任した取締役が取締役会の承認を得ずに欠席した場合には、インド側より取締役を排除される可能性があります。
そうした事態を避けるために、取締役会が開催される州を3カ月以上離れ、取締役会に出席できない場合は、取締役会決議において代替取締役(Alternate Director)をあらかじめ選任しておくか、取締役会から欠席を承認する旨の承認書面を入手しておく必要があります。
なお、代替取締役の権限は、本来の取締役に代わって取締役会に出席することができます。任期は、本来の取締役と同じですが、当該取締役が取締役会が開催される州に戻ってきた場合には退任しなければなりません。
主要経営責任者
■主要経営責任者(KMP、Key Management Person)
2013年会社法から、新たに主要経営責任者(KMP、Key Management Person)という概念が導入されております。
主要経営責任者は以下のとおり規定されております。
・CEO、マネージング・ディレクター、もしくはマネージャー
・CFO(Chief Financial Officer)
・会社秘書役(Company Secretary)
・その他施行規則等で別途定めるもの
上場会社および資本金1億ルピー以上の公開会社は、常勤の主要経営責任者を定める必要があります。常勤の主要経営責任者は取締役会での選任が義務付けられており、取締役とは別に通常業務を遂行する中で、法令順守等、取締役同様の責任と義務を負うことになります。
会社秘書役(Company Secretary)
■会社秘書役の設置
インドの会社法上、払込資本金額が10クローレルピー(1億ルピー)以上の会社は、常勤の会社秘書役を設置しなければなりません。これは非公開会社もしくは公開会社であることは問いません。
一方、払込資本金額が10クローレルピー(1億ルピー)未満の会社は常勤の会社秘書役の設置義務はありませんが、外部の会社秘書役に依頼して、その会社がインド会社法の規定に遵守している旨の証明書を会社登記局に提出する必要があります。
会社秘書役は、日本にはない概念であり新規で現地法人を設立する会社は、その役割を軽視してしまう傾向があります。しかし、組織のコンプライアンスを担う重要な役割であるので、どのような秘書役を常勤にさせるか、また外部にアウトソースするかによって、組織の管理も大きく変わってきます。
会社秘書役という資格は、弁護士や勅許会計士とともに公的な資格であり、インドでの合格率は2%~3%というように非常に難易度の高い試験です。そのため、会社秘書役の確保に苦しんでいる会社もあり、実務上は、常勤の会社秘書役の設置が必要な会社であっても、月に数日出勤してもらうことで「常勤」という要件を満たしているとしている会社もあるようです。
監査役、監査委員会
■日本の監査役とインドの監査役の権限
日本の監査役は、取締役等の職務執行の監査を行う機関と位置付けられており、業務監査権と会計監査権を持っています。これらを行うために、各種調査権や請求権(提起権)、報告する権利を有しています。
一方、インドの会社法では、監査役(Auditor)は監査業務のほか、取締役会、または監査委員会で承認された業務のみ行うこととされています。業務監査権は、取締役で構成される監査委員会(Audit Committee)が有しており、上場会社およびその他一定の会社に対して、設置を義務付けています。したがって、インド会社法上の監査役は、日本会社法上の会計監査人に相当する機関であると考えればイメージがしやすいでしょう。
■インドにおける監査の種類
インド会社法上、会社は公開会社、非公開会社等のステータスや規模などに応じて、さまざまな監査を受ける必要があります。
[法定監査(Statutory Audit)]
インドに存在するすべての会社が受けなければいけない監査です。日本の会計監査に相当し、財務諸表について監査を受ける必要があります。
[税務監査(Tax Audit)]
インド所得税法により定められた監査です。前会計年度に1,000万ルピー以上を売上げたインド内国法人に適用されます。法定監査と税務監査を同一の監査人が行うことに問題はありません。
[内部監査(Internal Audit)]
経営リスクの認識や資産管理の強化、効率的な業務フローの設計、取引プロセスの改善、コーポレートガバナンスの徹底を目的とする監査です。下記の会社は勅許会計士による内部監査が義務付けられています。
・上場会社
・前会計年度において、資本金が5億ルピー以上、売上高が20億ルピー以上、銀行・公的金融機関からの負債総額が10億ルピー以上、未払預り金が2億5,000万ルピー以上のいずれかを満たす非上場公開会社
・前会計年度において、売上高が20億ルピー以上、または、銀行・公的機関からの負債総額が10億ルピー以上の非公開会社
[原価監査]
中央政府が必要と判断した場合には、製造、加工業を営む会社に対して、原価会計士(Cost Accountant)による監査を受けるよう命じることができます。中央政府はその監査報告に基づき、当該会社に対して必要な措置を取ることができるとされています。その他、監査委員会による監査、中央政府が任命した特別監査人による、特別監査などがあります。
■監査役の選任と解任
[監査役の選任]
日本の場合は株主総会の普通決議により選任され、取締役が議題を提出する過程で監査役の同意が求められます。監査役会の場合には、半数以上は社外監査役でなければなりません。さらに、監査役は独立性を確保するため、監査役選任について意見陳述権を持ちます。
監査役の選任は、日本の方が厳しいと言えます。インドでは、①監査役候補者からの同意書の取得、②株主総会の普通決議による監査役の選任決議、③選任された監査役への通知、④選任された監査役からROCに書面で通知することによって日本よりは簡易に監査役を選任することができます。
ただし、会社設立後最初の監査役は、会社登記後1カ月以内に取締役会(取締役会が選任しなかった場合は最初の株主総会)で選任する必要があります。
日本の監査役の任期は、原則として4年(非公開会社は10年まで伸長可)であり、短縮することは一切認められていません。一方、インドの場合、任期は6回目の株主総会までの5年間ですが、会社設立後、最初の監査役の任期は最初に行われる定時総会までとなっています。
[監査役の解任]
日本の会社法では、監査役をいつでも、理由の如何を問わず、株主総会の特別決議で解任できるとされていますが、インドの会社法では、監査役は下記の場合を除き再任が原則とされています。
・再任が不適格となった場合
・再任される意思がない旨の書面を会社に通知した場合
・監査役を再任せず、新たな監査役を選任する決議が株主総会でなされた場合
・監査役が死亡したことにより、新任監査役を選任することができなかった場合
インドでは、会社は監査役を自由に解任することはできず、任期中に監査役を解任する場合には、株主総会の普通決議に加えて、インド政府の事前承認が必要となります。
このように、インドでは再任が原則であり、任期中での解任も正当な理由がない場合は認められていないことに、注意が必要です。
よって、インドに会社を設立する場合は、設立手続中に会計事務所にコンタクトを取り、監査の対応や価格、評判などを事前にヒアリングして、選考をしておく必要があります。インド子会社を連結子会社とした場合にも、インドにおける監査の実施が遅れ、日本の親会社の連結決算手続に支障をきたしているケースも散見されています。
[監査役の報酬]
日本の場合は、定款に定められるか株主総会の普通決議で監査役の報酬が決定されます。この例外として、監査役が2人以上いることを条件に総額のみを定め、監査役の協議により内訳を決めることが可能です。一方でインドの監査役報酬は、原則として株主総会の普通決議で決定されます。
[内部監査人]
内部監査人は、会社の機能が適切に働いているか、会社が適切な活動を行っているかについて、監査をします。内部監査の範囲や方法および監査の頻度については、監査委員会または取締役会において決定されます。下記のいずれかの要件を満たす会社は、内部監査人の設置が義務付けられています。
・上場会社
・前会計年度において、資本金が5億ルピー以上、売上高が20億ルピー以上、負債総額が10億ルピー以上、未払い預り金が2億5,000万ルピー以上のいずれかの要件を満たす公開会社
・前会計年度において、売上高が20億ルピー以上、負債総額が10億ルピー以上の非公開会社
[監査委員会、指名報酬委員会]
監査委員会および指名報酬委員会は、3名以上の取締役(指名報酬委員会の場合は業務執行をしない取締役)で構成され、構成員の2/3以上はマネージング・ディレクターおよびホールタイム・ディレクター以外の取締役です。下記の要件をいずれか満たす場合に、設置が義務付けられます。
①資本金が1億ルピー以上の公開会社
②売上高が10億ルピー以上の公開会社
③負債総額が5億ルピーを超える公開会社
監査委員会は、会計監査人の選任や報酬に関する推薦、業務監査の遂行を行います。
また、従来設置を奨励されていた、取締役や従業員が監査委員会に対して直接問題点を報告することを可能にするための内部通報制度の整備が2013年会社法からは義務付けられています。指名報酬委員会は、取締役者の選任、解任案を取締役へ提案をし、取締役の業務遂行の評価を行うとともに、取締役の独立性への判断基準のガイドラインや、報酬に関する基本方針を策定し、取締役会へ推薦するなどの機能を持ちます。
■CSR委員会の設置
CSR委員会は、3名以上の取締役で構成され、そのうち少なくとも1名は独立取締役としなければなりません。適用対象は下記の3要件のうち、少なくとも1つを満たす企業で上場、非上場を問いません。
・純資産が50億ルピー以上
・売上高が100億ルピー以上
・純利益が5,000万ルピー以上
該当する会社は、直前の3会計年度における平均純利益の2%以上をCSR活動に関して支出しなければならないとされています。
CSR委員会は、CSR活動を行うための基本方針の作成、実施状況、支出状況のモニタリング、取締役会への報告などを行います。非上場の公開会社および非公開会社はCSR委員会のために独立取締役を選任する必要はありません。 なお、2025年12月5日に国会(Rajya Sabha)に提出されたCompanies (Amendment) Bill, 2025では、CSR適用基準のさらなる引き下げが提案されています。具体的には、純資産500億ルピー以上から100億ルピー以上へ、売上高1,000億ルピー以上から500億ルピー以上へ、純利益5億ルピー以上から3億ルピー以上へと変更し、より多くの中堅企業がCSR義務の対象となることが見込まれています。また、CSR委員会にCSR実施の経験を有する取締役を少なくとも1名選任することも義務化される予定です。ただし、本稿執筆時点(2026年6月)において、同法案はLok Sabhaでの審議・可決を経ておらず、まだ成立していません。今後の動向に注意が必要です。
参考文献
[参考資料・ウェブサイト]
Companies Act, 2013
https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/acts.html
Companies (Incorporation) Rules, 2014
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Companies (Share Capital and Debentures) Rules, 2014
https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/rules.html
Companies (Prospectus and Allotment of Securities) Rules, 2014
https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/rules.html
Companies (Management and Administration) Rules, 2014
https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/rules.html
Foreign Exchange Management Act, 1999 (FEMA)
https://www.rbi.org.in/Scripts/Fema.aspx
Foreign Exchange Management (Non-debt Instruments) Rules, 2019
https://www.rbi.org.in/Scripts/BS_FemaNotifications.aspx
Income Tax Act, 1961
https://incometaxindia.gov.in/pages/acts/income-tax-act.aspx
Securities and Exchange Board of India Act, 1992
https://www.sebi.gov.in/legal/acts.html
SEBI (Issue of Capital and Disclosure Requirements) Regulations, 2018
https://www.sebi.gov.in/legal/regulations.html
Press Notes issued by Department for Promotion of Industry and Internal Trade (DPIIT)
https://www.dpiit.gov.in/policies-rules-and-acts/press-notes-fdi
Master Direction - Foreign Investment in India, Reserve Bank of India
https://www.rbi.org.in/Scripts/BS_ViewMasDirections.aspx
Circulars issued by Ministry of Corporate Affairs
https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/data-and-reports/circulars.html